日本版
6シグマ
社長さんへの手紙
 
昨年来検討の電話設備の更新
突然なぜ、取り止めたのですか?

  社長さんの会社は、世の中リーマンショック以来の景気低迷が続くにもかかわらず、前期はほぼ計画通りの販売と収益を達成され、今期の見通しも十分明るいとのことでした。経営理念も明快で、事業計画への取組みが非常に上手く行っています。生産体制の増強についても、最新鋭の設備に関する研究を怠らず、将来の受注増が見込める中、長期計画をしっかり立てられ、段階的に実施してこられました。経営に大きな突発的な問題が生じない限り、この方針は継続していただきたいものです。
 しかし、昨年から計画していた電話設備の更新案件を突然取りやめたとのこと。社長さんからの突然の電話、大変残念に思いました。 


本業の設備投資案件を
確実にモノにするためにも!

 社長さんは、会社の古くなった電話設備の更新の必要性を実感し、昨年来検討されてきました。あらためて、突然取りやめを決定した理由をお聞きしましたところ、ある会社の社長をしている友人から、「最近、私のところは全面的に出費を抑えている」という話を聞いたからとのことでした。社長さんにしては、少し消極的過ぎる理由だと思いました。
 現在の電話設備は、すでに15年以上使用しており、設備としては古く、機能も陳腐化しています。しかし、本業に不可欠な設備ではなく、今のところ故障もなく、不自由はしていないとのことでした。ただ、社長さんは寿命からくる故障を心配されていました。交換用の部品もなくなり、サービスメンテも難しくなるのではないかともおっしゃっていました。
 現在のような景気低迷期には、業者もいろいろと便宜を図ってくれるものです。資金繰りの面で余裕がある今こそ、実施しておいた方がよかった案件だったのではと思います。次の本業での生産設備への投資案件を確実にモノにする上でも、今回、断念した案件について学ぶべき点を整理しておきたいものです。(2009.7.25 中小企業診断士加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
設備投資は、
失敗が許されない「6シグマ課題」!

 製造業の中小企業にあって、製品の品質安定化、コストダウン、生産性向上さらには将来の受注増を見越した生産規模の拡大等の面から、最新設備への置き換えや製造ラインの増設等の設備投資問題にどう取り組むかは、会社の将来を左右する重大な経営課題である。
 経営トップの社長は、資金の調達、設備の研究・調査・選定、そして運転の安定化まで、スピーディで確かな決断と実行が求められる。その上、失敗は絶対許されない。中小企業の設備投資問題は、まさに「6シグマ課題」そのものである。
 ここでは、「日本版6シグマ」の問題解決手順「W型問題解決フロー」に沿って、中小企業の設備投資問題に対する標準的なアプローチ方法について概説したい。中小企業の社長が持っている決断や実行力を補完するガイドラインとして有効である。

 第一ステップは、中小企業の社長としての設備投資に対する問題意識の明確化である。製品の生産量、品質のバラツキ、コスト、生産性等の推移を見て、どんな問題があるか、多額の投資をしてでも設備更新や増設の手を打つべきかどうか、自分自身にとってどの程度切実な問題であるかをはっきりさせる
 第二ステップは、設備更新や増設を決断し、実行するための現状把握である。あらためて、製品の生産量、品質のバラツキ、コスト、生産性等に加えて、顧客からの将来の受注見込み量を把握する。
 第三ステップは、第一、第二ステップを踏まえ基本構想をデザインする。設備更新や増設の目的および実際的イメージを明確にし、収益目標を設定するラウンドである。
 第四ステップは、基本構想を実現するための具体的な課題を設定するラウンドである。資金の調達、設備の研究・調査・選定、運転の安定化まで、各分野別に、具体的なアプローチ策をデータ化し、「何のために、何をどうす」という表現で、基本的課題、即ち「サブ6シグマ課題」を設定する。
 第五ステップは、各「6シグマ課題」別に、それぞれの具体的なアプローチ策を見直し、具体的な実行計画を作成する。第四ステップで自由にデータ化したアプローチ策を見直し、「何のために、いつまでに、何をどうするか」を明確にした「実行手順書」を作成するラウンド」である。
 最後の第六ステップは、「実行手順書」にもとづいた各アプローチ策の実行とその進捗管理である。
 なお、「W型問題解決フロー」の詳細については、別途「日本版6シグ」のための問題解決技法として体系化した「BSTプログラム」を参照して戴きたい。


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