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BMM【Belhyud Mail Media】 No.72
2005.9.9発行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
不可欠な
「創造的情報処理能力」のレベルアップ (3)
情報、データを弁別する力
大分以前のことであるが、「チガイがわかる男」というウエスキーのテレビコマーシャルがあった。「いろんな銘柄のウエスキーの味のチガイがわかる、中でも○〇〇ウエスキーの良さがわかる男」といった趣旨のコマーシャルであったと思う。最近ビールも、コクやキレを売り物にしているが、そうした微妙な違いがわかる人はやはりビール通なのだろう。音楽の世界でも同じことが言える。演歌の好きな中年は、北島三郎の歌と都はるみの演歌を同じだとはとっていない。どちらも唸る感じだが、チャント聞き分けているし、歌い分けている。しかし、そんな彼らにも、最近の若い歌手の歌になるとみんなウルサイ音でしかなくなる。
このように「ある事象」(Aο)について、何もかも一色単にしないで、それぞれの事象は一見同じようであるが、実はそれぞれに微妙なチガイが存在することを識別し、認識できる力、これが「弁別する能力」である。ところが、日本の企業では、上司や同僚の意見や情報に、あれこれ真意を質したりすると、つまり弁別力を働かそうとすると、「理屈っぽい」と嫌われる場合が多い。少々疑問があっても、さしさわりなく、軽く受け止めて波風を立てないことが賢いとされる。また企業では「価値のある情報」、「価値のない情報」という言い方がよくされる。部下の報告やアイデアも、「平凡だ。こんなことは分かり切っている。そんなはずはない」等と、上司の評価で乱暴に棄てられてしまうことも多い。ここでは上司の経験や価値観が、「価値ある情報、価値のない情報」という分類の基準になっている。本当に情報にはそうした価値のアリナシがあるとしても、とかく、こうした分類的な評価方法が幅をきかしている。
こうした環境で、日本企業の社員は、次第にイマジネーション欠乏症や感受性スリキレ症に陥り、情報を厳しく弁別する姿勢や能力を失ってきている。ここにきて経営環境が厳しく急変してきたこととも相俟って、日本企業は経営の内外でおきている顕著な「事象」(Aο)に対して鈍感な事なかれ症候群症を抱え、問題解決に向けてのボトムアップ力を急速に失ってきている。
経験的に言って、どのような企業でも、6シグマプロジェクト活動で、最初ほとんど例外なく苦労するのは、顧客の声「VOC」をひとつずつ簡潔にデータ化したり、「VOC」に対応できない現実の問題点「CTQ」をひとつずつデータ化したりする作業である。「CTQ」を解決するための手がかりとしての「具体策」をデータ化する作業についても同じである。日本企業の多くの社員は、実際的な事象を客観的に観察したり、言葉や文字で正確に表現し、伝達する極めて原始的な能力を著しく退化させてしまっている。本来は充分持っていたはずの観察力や情報処理能力がまったく錆びついてしまっている。
こうした意味で、6シグマプロジェクトリーダは、メンバーの部下が集めた情報、関連部門から寄せられた情報に対して、何よりも豊かなイマジネーションを働かせ、その「事象」(Aο)の持つ意味合いをきびしく理解し、認識しようとする姿勢を習慣化することが、何にも増して重要である。このことが、6シグマプロジェクト組織トータルの「VOC」や「CTQ」を客観的に本質的に見る目を養い、あわせて基本的な課題「SSP」をシャープにコンセプト化する力を回復させることにつながるからである。
情報、データの本質を引き出す力
「情報を弁別する」とは、ある「事象」(Aο)に関して情報を収集し、イマジネーションを働かせ、その個々の情報に隠された本質を見極めることである。「6シグマプロジェクト」において、「情報の本質的な部分」(Σb)が見えず、粗末に扱ってしまうというのにはそれなりの理由がある。情報の本質を見え難くしているものは、ひとつは根元的な「問題意識の弱さ」であるが、もう一つ理由がある。それは「具体性」である。「物事の具体性の部分」(Σa)が、「情報の本質的な部分」(Σb)をベールのように覆っているからである。
「クレーム情報」をもとに、その一例について考えてみよう。A君から「顧客から、ある製品について、こういう内容のクレームがあった」と上司に報告があったとする。ところが上司は、「B君やC君なら、その程度のクレームなら、その場で顧客に説明し、解決してくるよ。A君、君はいつもお客の言いなりではないか」という一喝してしまったという。上司は、かねがねA君の顧客に対する説得力に不満を持っていたのである。こうした場合、「A君からの情報」、「その程度のクレーム」という具体的な理由「Σa」で、上司はA君が持ってきた情報の本質的部分「Σb」を理解しようとせず、「VOC」や「CTQ」の絞り込み、強いては「SSP」の設定にまで関心が行かなかったのである。
クレーム情報と言えば、これまでの「TQC」では、どんなクレームがどれだけあったか等、クレーム発生状況を「工程別」や「顧客別」や「クレーム種類別」に層別し、パレート図等を作成する方法がある。このような「具体的な部分を形式的に分類し、分析する」という思考方法では、結果的に無数と言っていいほど存在する「具体的な事象」へのモグラ叩き的な対応で終わってしまいかねない。
「日本版6シグマ」では、具体的な視点「Σa」からクレーム発生の事象「Aο」を分類し、分析するという姿勢を否定している。分類的、分析的思考に慣れている人にとっては、「具体性」を捨てるわけにはいかない。なぜならば、具体的な部分「Σa」を棄てると、あとは何も残らないからである。それでは情報が持つ「具体性」を棄てても、後に残るものは何か。それは本質的部分「Σb」である。顧客ニーズの本質を探り、根本的な対応策を打つ。結局この理由で、日本版6シグマはクレーム情報を広く収集し、その本質的部分「Σb」を明らかにするステップを優先させるのである。
情報、データ間の本質を同定する力
ある事象「Aο」に関連して、収集した一つ一つの情報に共通した本質的部分「Bτ」を自らに取り込むプロセスが「同定プロセス」である。つまり、「VOC」、「CTQ」、「SSP」のコンセプト化は、それぞれ収集した情報をグルーピング化し、表札をつくる情報処理プロセスである。
例えば、上司と部下の関係で言えば、上司が部下の意見や考え方がよく理解でき、任せられるというのは、自分の意見や考え方、あるいは自分がこれまで経験しことと共通点を見いだすことができる場合である。このように、お互いの共通点を明確にし、共有化する対話のプロセスが同定のプロセスである。ミスがあったり、手間取ったりすることが心配でも、部下に任せきれるというのは、結局、上司が部下を本質的なところで信頼できるからである。そして信頼できるということは、自分と部下と間には、基本的なところで同じ部分「Bτ」があると認識できるからである。
日経ビジネスのインタービユーに応えて、前整理回収機構社長の中坊氏が「会社は社長が言うてること以上に社員がしなければいかん。そのためには下の人が上の人の心を理解して、自分で発案して、自分で行動せないかんのですわ。・・・僕の指示がどんな意味を含んでいるのかをじっくり考えて行動することなんです。少々指示に反したような行為をしても、指示の意図さえ理解しておったらよいんです。・・・会社というのは自発的に考えて、自分でやるという風土が生まれてこないと実績は上がらないんでしょうな」と言っている。中坊さんが言っていることも、部下とのやりとりの中で「同定」を前提とした一体化体制ができていることが前提になっている。
ここでいう「同定」−Idetificasion−と言う言葉は、湯川秀樹博士の「同定の理論序章」の中から引用したものである。博士はこの中で、「同定とは、それぞれについて異なる存在として認識した上で、しかし、結局は同じことだと見ることである」としている。ここで、「それぞれについて異なる存在として認識する」とは「弁別する」ことである。「同じことだと見る」とは「同定する」ということである。博士は創造的問題解決の手がかりを、この「弁別と同定の能力」の中に見いだされるとして、「同定の理論」を提唱している。そして「ニュ−トンがリンゴの落ちるのを見て、なぜ月は落ちてこないのかを疑った」という話をもとに、「リンゴと月の運動の違いを明確にした上で、双方に共通した本質的部分を同定しようとして、万有引力を発見した」という趣旨の話を紹介している。
このニュートンの万有引力発見の話を表札をつくる情報処理プロセスに沿って説明すれば、次の通りである。
@「リンゴが落ちる」、「月は落ちない」という二つの事 実をデータ化し、ラベル
化する。
A二つのチガイをよく弁別した上で、しかし、「リンゴが 落ちるのも、月が落ち
ないのも同じことではないか」としてグルーピングする。
B
「リンゴが落ちる」、「月は落ちない」という具体性を棄て、双方の事実を同
時に説明できる「万有引力の法則」 というを本質部分を明確にした上で、「
リンゴが落ちるのも月が落ちないのも、それは引力が存在するからである」
という表札をつくる。
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BMM【Belhyud Mail Media】 No.72
2005.9.9発行
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【WEB】 http://www.belhyud.com/0.htm
【MAIL】 jin-inoue@belhyud.com
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【発
行】 ベルヒュ−ド研究会
【編
集】 井 上 仁
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