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目標による管理(Management by
Results)は、行動科学の理論によるマズローの欲求五段階説(後注参照)を背景に考案された。「現代の経営」の著者ドラッカーが人間性重視の経営手法として最初に提唱した。・・・・・(ドラッカーは工場歯車となって疎外感を味わっていた産業労働者が、自らの存在意義を見いだせる「産業人」の社会を築くことを訴えた。戦後の日本企業は社員を家族に見立てた「従業員共同体」として、「産業人の社会」を築いた。)
目標による管理(目標管理)は、特に難しい手法や考え方でなかったために日本においても比較的速く、広く普及した。しかし、その導入については、各企業が自由な発想でやりやすいところから実施したために、実施の方法やその成果には導入企業の間で相当バラツキがあると思われる。
目標管理は自主管理が原則
最初のステップでは、目標は自主的に設定する。部下の自主性を尊重し、目標は自分で決定することを基本としている。自分の能力は各個人自身が一番知っている。その能力に合わせて目標レベルを決定する。部下の高度な欲求である自己実現の欲求を刺激し、企業の目標と各個人の目標を一致させるためである。
この段階で、上司は、企業の経営方針に基づき、組織としての方針と目標を明示する。部下に対しては、一方的に指図するのではなく、やる気と創意工夫を引出すための動機付けをし、周辺の条件作りをする役割を持っている。
次の第二ステップでは、自主管理がポイントになる。各個人が自分の目標をどう達成するかは、自主的に管理を行うことになっている。達成の手段や方法は、致命的な問題がない限り、たとえ間違っていても自分で考え自分で行動することが要求される。期限までに達成する詳細な計画も自分で作成する。上司は余分な干渉を避け、組織にまたがる問題が発生したときにそれを解決し、本人へは側面から支援するようにする。
第三ステップは評価であるが、結果は自分で評価する。自分で作成した目標に対して、自分で責任を持って行動実施した結果について、自分自身で納得のゆく評価をする。これを毎期繰り返すことになる。 一般的な目標管理では年間計画を作成する。しかし、1年間では期間が長すぎるために、普通は半年毎に中間チェックを取り入れている。
目標管理はマネジメントツールとして効果を発揮
目標管理は、会社の経営計画や経営方針を組織の各部門でブレークダウンし、社員に徹底し、実現するための手段すなわちマネジメントツールとして効果を発揮してきた。従業員に企業の目標を理解浸透させ、従業員自らが企業の目標を踏まえて、個人目標を設定するように運営されてきた。
目標管理は、上司や管理者の運営、フォローによって、従業員が適切な目標を作成し、動機づけされ、達成することを通して能力向上に結びつけた点で、製造部門のQCサークル活動と並んで管理部門や間接部門の経営管理手法として、その成果は十分大きかった。
しかし、その実施について問題がないわけではない。部下をまとめる上司の負担も大変である。数人の部下ならまだ何とかなるが、10名またそれ以上の部下がいる場合に、一人一人と面談をしなければならない。その上で、部下の自己評価内容をチェックし、上司としての見解や指導の方向まで、双方に納得のゆくように書類を作成する。日常業務を抱えながらの対応は、多忙な上司には時間の取られる大変な業務になる。
目標管理は評価が難しい
また、目標管理では評価の問題が一年中ついてまわる。達成度、困難度、努力度、貢献度などが評価されるが、努力度、貢献度は定量化が難しい。自己評価の段階では、どうしても甘くなってしまう。自分自身にあまり厳しい結果を出すと、その期間何をしていたのか疑われてしまう。逆に、甘くしすぎると目標が最初から甘かったのではないかと思われる。客観的で適正な評価基準を作ることがたいへん難しい。個人差も大きい。自己主張の強い人の場合、実際の成果とは別に評価が良くなる傾向が出てくる。謙虚な人の評価は、実績を上げているにもかかわらず悪くなってしまう傾向にある。どうしても不公平感が免れない。
他方、上司の評価は甘くなる傾向が出てくる。日常から、部下の仕事を良く見ているようで見れていない場合が多い。部下の人数が少なければ、毎日目を配り、問題が発生しそうな状況を把握し、支援ができるが、数が多い場合は、目が届かなくなる。しかし、評価をしなければならない。従って甘くなる。面談も、人数が少なければ日常から顔を突き合わせているだけに、形式的になり、改まって面談しても効果が少ない。部下が多いと適切な助言ができず、結局のところ、各人任せになってしまい、評価も自己評価に近いところに収まってしまうことになる。
評価が甘くなるもう一つの原因に、日本企業では人事考課と実際にはきっちり連動されていないことがある。連動させると目標が甘くなり、達成すると良い評価をせざるを得なくなる。目標管理は、わかりやすく、導入しやすいために、各企業とも何等かの形で実施しているが、実施する際の自由裁量の範囲が広いために、目標管理の真の成果を十分引き出している企業ばかりではない。
6シグマの目標は組織課題
シックスシグマは、1980年代に世界市場を席巻した日本製品の高信頼性を超えることを目標とし、百万回に3.4回程度のエラーしか発生しないビジネスシステムを前提としている。指導原理として、COPQ(Cost
of Poor
Quality :不良、エラー、欠陥等によって発生するコストの総称」)とCTQ - (Critical
To
Quality :経営に重要なインパクトを与える要因)を設定している。
COPQの陰には、多くの隠れた失われた機会損失など、劣悪な品質が招くコストがあるとされ、6シグマでの目標の設定では、VOC(Voice
of
Customer)、つまり市場や顧客の視点で改革的なテーマが選択される。テーマ自体またそのレベルの高さも、目標管理とは相当異なっている。・・・・(企業は共同体の維持ではなく、富を生み出す、顧客のニーズに応える、グラーバルな競争に勝つという視点から、より高い目標(ターゲット)に主体的に関わり、実績を上げることを通して自己実現を図る「企業人」を求めるようになってきた。)
目標実現に関わる社員は、「シックスシグマキャスト」として経営のライン上に位置づけられ、「チャンピオン、マスターブラックベルト、ブラックベルト、グリーンベルト」から構成される。特に、マスターブラックベルト、ブラックベルトは100%専任で取り組む。それぞれの任務、役割に応じて、シックスシグマツール、シックスシグマ手法等の教育訓練も徹底的に実施される。シックスシグマは考え方の徹底等中心に、他に比較するものがないほど、教育研修にお金をかけている。
またプロジェクト活動は、マスターブラックベルト又は、外部コンサルタント会社等によってチェックされるシステムになっている。ブラックベルトはチャンピオンに対して、直接進捗状況を報告する義務も設定されている。ブラックベルトをマネジャーになるための資格にしているところもある。 こうした6シグマでは、目標は組織の課題そのものであり、評価は金額で成果を測定することを前提とし、実績を上げた企業では、マネジャー以上についてはボーナス評価の40%に反映する方法を取っているところもある。
このように目標管理とシックスシグマを比較してみると、シックスシグマは「組織的な経営システム」としての完成度は高い。人間尊重ということで自主性に任された部分の多い(自由裁量の範囲の多い)目標管理と異なり、シックスシグマにおいては、システムをしっかりと構築し、従業員への教育訓練に充分なコストと時間をかければ、人間的な弱点で本来の目的を達成できなくなることを予め予防し、補完できると考えている。
しかし、こうしたシックスシグマは、本当に日本の土壌に合うのだろうか。マニュアルやシステム、制度に直接的にがんじがらめに縛られることを嫌う日本の企業で更に良い方法はないのか。人間尊重の経営とは、個人の能力を最大限に発揮させ、生きがいを持たせることである。日本の企業に定着させるには、全員が経営者の心意気をもって仕事をするような日本的なシステムに変える必要がありそうである。
注:
マズローの欲求五段階
1 生理的欲求
衣、食、住など人間が生きていく上での最低限の欲求
2 安全の欲求 危険や災害等から自分を守ろうとする欲求
3 社会的欲求 社会生活に同化し、認められたいという欲求
4 自我の欲求
自分の能力を伸ばし社会的に認められたいという欲求
5 自己実現の欲求
自己を何らかの形で実現したいという欲求
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