組織改革の手順

問題解決型「M−5型組織」をつくる手順

 不況が長引き、深刻化する中で、『競争力のある、強い組織』をつくりたい」。これは経営者や人事部門の基本的な願いである。これまでに「組織のあり得る姿」を、「6つの組織モデル」で明らかにし、これからは問題解決力のある「M−5型組織」をめざす時代であるとした。
  だが、必ずしも現実的な形で存在しているわけではない。皆さんの置かれた環境に即して、自前の「M−5型組織」を模索し続けていかなければならい。いつまでも手をこまねいていてはいけない。仕上がり具合は別として、先ず取り組むことが大切です。
「M−5型組織づくり」は、皆さんの組織にとっての「一つの解決すべき課題」でもあるのです。

  ベルヒュード研究会では、研修やコンサルティングを通して「M−5型組織づくり」の実践的な指導を展開しているが、先に紹介した「組織的問題解決フロー」がベースになっている。各ステップは、いくつかの重要な手法で構成されているが、いずれも実践的指導の中で充分習得できるものである。最後に、その習得上のポイントも含めて、「M−5型組織へのバージョンアップ手順」を紹介することにしたい。

                      

第一ステップ 組織診断

  「M−5型組織」へのバージョンアップに挑戦するには、先ず、現在の自分たちの組織の実態や自分自身の組織
 人間としての生き方について、率直に認識を共有化し合い、共通の土俵に立つことが大切である。

      (1) 「組織やチームが持つ特徴や傾向」および「一人ひとりの組織人間としての特徴や傾向」を診断する。
        最初に、メンバー一人ひとりが、先の2種類の「チェック表」を使い、セルフチェックを行う。   

      (2) チェック結果を持ち寄り、「全員で自分たちの組織やチームは『6つの組織モデル』の中の、どのモデ
         ルに近いか」、「それぞれはどの『組織モデル人間』に近いか」を確認しあう。

第二ステップ 行動課題のコンセプト化

  組織のバージョンアップ

  現実に「Mー5型組織」を追求するにあたって、そのあるべき姿は組織の目的や組織を構成する人の考え方によ
  ってずいぶんと違ったものになるかもしれない。ただ、この組織には、多様な一人ひとりの人間をかけがえのない
  存在として、彼らの「意識、モノの見方、考え方」や「技術・技能や経験・知識」をよく理解し、尊重し、「適材適所」
  に正しく位置づけできる基本的仕組みが不可欠である。

       (1) 自前の「M−5型組織」を構築していくという考え方に立って、組織としてのあるべき形態や運営上
          のルール等について議論し、具体的に「何をどうする」という「実行上の課題」を明確にする。ここで
          は「会 議の持ち方」や「計画の立て方」から「仕事の仕方」や「評価の仕方」まで、ことごとく洗い直し
          て見る必要がある。                           

       (2) 次は、それぞれの課題の実行は、結局「何のために、何をどうする」ことにつながるのかを議論し、
          「M−5型組織」に向けての条件整備に必要な「基本的な課題」をコンセプト化する。  

   リーダーシップのバージョンアップ

   仕事は本来「課題設定」→ 「具体的行動計画」 → 「実行」 →「結果の検証」のサイクルでまわるが、「M-1型
  組織」では、それぞれのプロセスが上から下へと序列的に分業化され、指揮命令型のリーダーシップで管理さ
  れている。
   これに対して、「M−5型組織」では、第一線のリーダーを中心に、仕事のプロセス全体が先に見た「3つの通
  意性」のもとに、組織全体の権限と責任で自己完結的に コントロールされる。 この視点から見ても、「M−5型
  組織」のリーダーに求められるリーダーシップ は、「M−1型組織」におけるリーダーシップとは根本的に違うも
  のになるはずである。
   そこで、「モノの道理」を踏まえ、自由闊達に発言し、行動できる自立した組織人間をめざして、また環境変化に
   対応して多様で個性的な一人ひとりを充分戦力化できるリーダーをめざして、「自分たちなりの行動課題」をはっ
   きりさせます。単に「意識や考え方の問題」に終わらず、「行動の問題」とし取り組みます。
  つまり「知行一致」だ。これまでの「自分の意識や考え方」、「組織の雰囲気や風土」 が、新たな行動への挑戦
  によって、どう変わっていくかを実感できること大切です。          

   (1) 先の「行動チェック表」をもとに、現在の自分に特徴的な「組織人間としての生き方」をよく認識した
      上で、「M−5型組織」のリーダーあるいは一員としてやっていく上で、どんな武器が必要か、行動パ
      ターンをどう変えていくべきかを考え、具体的な行動課題を明確にする。
   (2) それぞれの行動課題の実行は、結局「何のために、何をどうする」ことなのかを議論し、「M−5型リ
     ーダーシップ」をめざす上での行動上の「基本的な課題」をコンセプト化する。

M−5型リ−ダ−シップの5つの基本的コンセプト

  1 自分の枠を越えて学ぶ姿勢を持っている。
  2 本質的な組織課題を設定できる情報処理力を持っている。
  3 多様な個性や力を持った部下を戦力にできる。
  4 適材適所の実行体制を厳しく管理できる。
  5 自然なことのなりゆきを待つことができる。


第三ステップ実行マスタープランの作成

  「実行マスタープラン」は、「M−5型組織」の実現をめざして、各具体策をスムーズに実行できるようにするための
 全体の流れや分担体制を明確にしたものである。

       (1)「M−5型組織」として具備すべき仕組みをどうつくるか、「M−5型組織」のリーダーあるいは一員とし
           て、自らの組織人間としての行動をどのように変えていくかについて、それぞれの「基本的課題」のコ
          ンセプトにもとづいて、あらためて必要な実行具体策を補充する。         

        (2)次は「基本的課題」ごとに、各具体策をいつ手がけ、いつまでに終えるか、誰が担当するかを明確に
           した「実行マスタープラン」をつくる。  

 

資 料      基本的な行動課題のコンセプト化法 

 (1) 行動課題は、具体的に「〜を〜する」という表現で、それぞれラベルに簡潔に転記する。
 (2) 全体を一気に解決してしまうようなスーパーな具体策は求めない。
   多様な具体策をひとつづつ積み上げていく感じでいく。
 (3) 具体策は「意味があるかないか」というよりは、「実際に取り組むか、取り組ないか」という姿勢で考える。
   具体策は、客観的に実行したかどうかが確認できるものでなければならない。
 (4) 各具体策の実行は、結局「何のために、何をどうすることなのか」という基本的課題を「コンセプト化」する。

   ■グルーピング
    ・具体策をバラバラに配置し、内容が似ていると感じたものをグループ化する。
     1グループは2,3枚を原則とする。
   ■表札づくり (
基本課題コンセプト化のための創造的情報処理プロセス
    ・一通りグルーピングが終わったら、「表札」をつくる。「表札」は複数の具体策が共通して言わんとする本質的な
     内容を明確にしたものである。
     先ず共通する内容をはっきりさせ、「〜のために〜を〜する」という表現の文章でまとめる。
    ・5〜6枚の表札になるまで、グルーピング、表札づくりを繰り返す。
     最終的な5〜6枚の表札が、「基本的課題のコンセプト」になる。
   ■インデックス図解の作成
     ・最終的な表札の間の関係を明確にし、基本的課題の全体をインデックス図解で表現する。表札の配置は左右
     対称を原則とする。
                        等価変換論に戻る

資 料   実行マスタープランのつくり方 

 (1) 「具体策」をもとにコンセプト化した「基本課題」について、実現しやすい順番を決定する。

 (2) 「基本課題」の「具体策」について、実行しやすいスムーズな流れをつくる。

     ■「基本課題」のラベルを実行しやすい順番に、上から下へ順番に配置する。
    ■最初の「基本課題の具体策」を手がけやすい順に左から右へ配列する。
    ■2番目以降の「基本課題の具体策」も、同じように上の列に配置された具体策との関係を見ながら、手がけや
     すい順に並べ位置を決定する。
     ■全体の具体策の左上から右下への流れを整理し、全体の区切りのいい具体策をもとに計画期間を決定する。
      はみ出た具体策は思い切って切り捨てる。

 (3) 各具体策を「誰がいつの時点で手がけ、いつまでに終える」を決定する。ここでは、無理なく確実に実行でき る余
    裕あるスケジュールが原則である。

    「この大事な時に、のんびりしてはいられない」という考えで、期間をできるだけ短くとって、計画全体を早く進める
    ようにする方向もあるが、精神論的な「姿勢の問題」と「実行の問題」をすり替え、根拠なく進行のテンポを早める
    ことは、計画の自滅をもたらしかねない。解決困難な問題を確実に実行していくためには、適材適所の分担ととも
    に、計画の期間を積極的に余裕の持てる方向に定めて、「具体策」全体をむしろ右寄せにしていくことが望ましい。           
             


さいごに

  これまでも「世の中は変わった。発想の転換が必要だ」と何度となく言われてきた。オイルショック不況時しかり、円高不況時しかりであった。企業では、こうした節目、節目で、トップ自ら従来の発想を超えた「ものの見方や考え方、仕事の仕方」を真面目に要求してきたし、社員もそうした課題に真剣に応えてきた。人事部門が中心になって、組織のあり方や仕事の仕方や評価のあり方等も都度見直され、ずいぶんとテコ入れされてきたと思う。
  
しかし、我々の世の中の変化に対する理解はいつも近視眼的で、本質的な意味合いを明らかにする議論にはいつも臆病であった。組織の仕組みが根底から変わることに対しては、頑なに拒み続ける勢力が決まって存在し、根本的なアプローチはいつも先送りにされてきたのである。今度ばかりは、深刻化する平成不況を脱出し、新しい成長路線を探っていくために、「問題計決型・M−5型組織」を実質的に実態のあるものにしていかなければならない。「6つの組織モデル論」を踏まえた「M−5型組織」へのバージョンアップ手法が、少しでも皆さんのお役にたてば幸いである。


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