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 BMM【Belhyud Mail Media】 No.136

  2013.6.24発行
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「復興まちづくり計画」(最終第一次案)を踏まえて
「双葉町復興基本施策」の検討を!

5月8日、双葉町復興まちづくり委員会の三井所清典委員長より、「双葉町復興まちづくり計画(最終第一次)案」が伊澤史朗町長に報告されました。三井所委員長は、「町民一人ひとりの避難生活の状況と復興への思いについての調査をもとに、町民の生活再建と町の復興に向けて、国及び東京電力に対して町民の要望として要求していくものを含めて、町が取組むべき施策を明らかにしました。本報告を十分に尊重の上、速やかに『双葉町復興まちづくり計画』を決定されるようお願いします」としています。


双葉町復興まちづくり「基本施策」
この度報告された「復興まちづくり計画(最終第一次)案」については、いろいろ異論はあると思います。ただ、先に紹介した「W型累積問題解決フロー」では、現時点での内容面での不十分さは、次の実際的なまちづくり施策を検討するラウンドで補っていくというのが原則です。大事なことは、皆さんの議論を、町として復興に向けてどう取り組むかを具体的に検討する場面に前進させることです。


そこで、「復興まちづくり計画(第一次案)」から読み取れる個々の復興まちづくりに向けた施策案をデータ化し、当面の最重点課題である「町民の自立と生活再建」に向けて、最終ゴールである「町への帰還、町の復興再生」に向けて、町としてどのように取組むかという「復興基本施策」の骨格を整理してみました。

ここに示す「基本施策」は、皆さんの議論のためのガイドラインです。町長、議会、町民が一体となって、さらにアイデアを出し合い、協議し、「町として、何のために、何をどのように取組んでいくか」を明確にした、より確かな「復興マスタ−プラン」に仕上げてほしいと思います。このマスタープランを町民皆で共有化しあうことこそが、「明日の安心と希望」につながると考えるからです。

さらに、この双葉町の被災町民の手による、被災町民のための「復興まちづくり計画」を、他の被災自治体、県、中央政治、国民へ広く発信することによって、国全体の力で原発災害復興に取組む体制をつくることにつなげて戴きたいと思います。


基本方針
町民一人ひとりの生活再建への決意のもとに、「ふるさと双葉町への帰還と町の再興」という最終ゴールをめざして、町民の多様な立場・考え方を理解しあい、町民一人ひとりの選択を尊重し、短期、中期、長期の課題を的確に設定し、町民と行政が一体となって町の総力を結集するとともに、被災自治体に共通した課題については、関連自治体と一致協力して、その解決に取組む。
「双葉町復興まちづくり計画(第一次)案」をもとに、町民の思いや要望を再確認し、先ずは原発事故後6年、今後4年間、町として短期に取組むべき「双葉町復興まちづくり計画」を策定する。
基本施策1
町民の生活再建と町の復興に向けて
全町民に共通した「2つの支援課題」への取組み



避難生活のフオロー、ケア
仮設や借上げ住宅での不自由な避難生活からの脱出なくして、町民の自立・生活再建への道はない。現実に長期化すると考えざるを得ない避難生活を、町民一人ひとりが健全に乗り切っていけるよう、町として、次の施策を最優先で実施する。

@避難生活をする町民の健康管理、心のケア体制をつくる。
A仮設・借上げ住宅の住環境、生活環境を改善する。
B町民の県内外の仮設や借上げ住宅への移住希望に柔軟に対応する。
C町民の絆の回復につながる町民のコミュニティづくりを支援する。
D町役場内に、「仮設、借上住宅での避難生活全般をきめ細かくフォローする組織」をつくる。     

賠償問題の解決支援
賠償問題の解決は、町民一人ひとりが原発被災に気持ちの上で決着をつけ、生活再建に踏み出すための必要条件である。賠償が迅速、確実、十分に行われるよう、町として次の施策を最優先で実施する。

@原発被災自治体に対し、内外からの専門家を含めた人材で構成する「賠償問題合同調査研究プロジェクト」の立上げを提案する。
A「賠償問題合同調査研究プロジェクト」を通して、被害実態に応じた正当な賠償が受けられるよう、被災自治体が一体となって、国と東電に賠償関連法律、賠償指針・基準の見直しと拡充、原子力紛争解決センターの手続きの迅速化、賠償実例の開示などの徹底を働きかける。
B個別の事情を抱える町民に対して、町弁護団との連携を一層推進し、賠償実例等に係る情報をもとに「賠償チェックリスト」を整備し、町民が求める正当な相当額の賠償を要求する手続を個別に支援する。 

基本施策2
町民の生活再建、町の復興に向けて
町民の選択を尊重した道筋づくりへの取組み

「双葉町外拠点(仮の町)での生活を希望する町民」への支援
「町への帰還と町の再興」を目ざすためにも、町民が仮設や借上住宅での不自由な生活を脱し、まとまって落着いて、長期に安心して暮らせる「双葉町外拠点(仮の町)」の整備は急ぐべき課題である。「仮の町」を町民の生活再建、町の復興に向けたコミュニティ維持の中核的な場とすべく、町として次の施策を最優先で実施する。

@「仮の町」は、「いわき市」を第一候補地、「郡山市」を第二候補地、「南相馬市」を第三候補地とし、「復
 興公営住宅」とその地域内外に居住する町民の交流のための集会所や公園等の「コミュニティ拠点」を
  整備する。
A「仮の町」で暮らす上で、就業、事業再開、教育、医療、福祉、商業等の生活関連サービスが十分受け
  られるよう、受入自治体、関連被災自治体と協議し、必要な施設の整備、サービス体制づくりを行う。
B「仮の町」を拠点として、町民の絆の維持、発展のために、町の歴史、伝統、文化の継承につながるイ
  ベントを実施する。
C住民自らの手による絆重視のコミュニティの運営、再興を支援する
D「仮の町」の候補地の調査、交渉、住環境、生活環境の整備から運営まで、町民の思いや希望に沿っ
  た町主導の「仮の町構想」を持って、国、県、受入自治体と協議できるよう、内外からの専門家を含め
  た人材で構成する「仮の町調査研究プロジェクト」を立ち上げる。

「双葉町を離れ、それぞれの地で生活再建を希望する町民」への支援

長期間、高線量のため町に戻れないことがはっきりしている以上、双葉町へは戻らない、「仮の町」へも移り住みたいとは思わないという町民の「町を離れ、別地で暮らす自由・権利」を認め、希望する地で生活再建(日常の暮らしを取り戻す)ができるよう支援する。

@「仮の町」に住まず、希望する地で生活する町民に対して、受入自治体とともに行政、生活サービスが
  十分受けられる支援体制をつくる。
A被災自治体に対して、「住まい」の補償について、「公共用地の買収基準の適用」を検討する専門家を
  核として研究プロジェクトの立上げを提案する。
B町民が自らの意思で町を離れる場合、「住まいの補償」、「融資」、「賠償の仮払い」等について、国民の
  世論をバックに国・東電に対する要求支援体制をつくる。

「町の復興再生の原動力となる町民の絆の維持、発展」に向けた取組み
町への帰還までの道のりは険しく、長い時間がかかりますが、仮の町で生活をする人、町に決別し他の地で生活する人も含めて、双葉町町民としての絆を維持し、発展させることこそが町の復興再生への原動力となるものです。「町民の皆さんにあいたい」、「町民は触れ合える場所がほしい」、「伝統文化を残していきたい」という町民の声に応えて、町として、双葉町の皆さんが集まって生活する「仮の町」という実際の場を拠点として、次のような取組みを行う。

@町民が交流できる自治会、イベント等の企画、開催を支援する。
A町の歴史、伝統、文化を継承していくための祭り等の企画、開催を支援する。
B双葉町に町に決別し、他所の地で生活する元町民に対しても、町からの行政情報を提供し続け、町へ
 の帰還の呼びかけにつなげていく。


基本施策4
「町への帰還、再興」という最終ゴールに向けて

低線量地域への活動拠点づくり
「町に戻りたい、町を復興、再生させたい」という強い意志の下、町の低線量地域に町民の絆を維持し、町の荒廃を防ぎ、町への帰還、町の再興への道を探り続けるための活動拠点「ベースキャンプ」をつくる。

町として、町の有志が集まり、内外の人材から支援を得て、次のような課題の検討に参加できる「復興拠点整備調査研究プロジェクト」を立ち上げる。

■町主導の除染計画を踏まえた国の除染施策等への積極的関与、監視
  @町内の放射線量モニタリング拠点の追加案作成
  A町としての区域再編計画案および区域別除染目標案作成

■町の荒廃防止、復興・再生に向けた町民の現地活動体制づくり
  @活動拠点「ベースキャンプ」の整備案作成
   ・候補地域案、候補地域の除染目標案
   ・活動拠点としてのインフラ案

  A町民の絆を維持し、町の荒廃を防ぎ、復旧・復興への道を探る活動案作成 

国との協議課題の明確化
帰還までの道のりは長いが、先ずは低線量地域に「復興拠点」を整備し、町への帰還、町再興への道を探る活動を開始するという目標に向けて、町が主体的に検討した上記(1)の案をもとに、次の諸項目について国と粘り強く協議していく。

@町内の放射線量モニタリングシステムの再整備
A年間追加被爆線量1mSV以下をめざす、区域別除染方法の明確化
B国による区域別除染施策の実施、結果の報告
C町が要請する低線量地域への活動拠点「ベースキャンプ」の整備
D高線量地域が周囲の地域に及ぼす影響調査、報告
E第一原発の安全な廃炉措置、状況報告
F中間貯蔵問題の被災自治体が納得のいく解決
G区域再編、避難指示解除見通し


町としての
「復興基本施策」への取組み体制づくり



「双葉町復興まちづくり計画(第一次案)」をもとに要約した「復興基本施策の骨子」と、国が「福島復興再生基本方針」にもとづき、「避難解除等区域等復興再生計画」で実施すべきとする施策との対応は、「別紙」の通りです。 町民の生活再建に向けて、さらに最終ゴールである町への帰還、町の復興再生に向けて、今後取組んでいくべき「基本施策」について、被災自治体、県、国と一体となった実施体制をつくっていくために、次のような「復興基本施策」の検討、実行に関するプロジェクトマネジメント体制をつくる。

■プロジェクトマネジメント体制づくり

@「基本施策」に関連する町民の勉強会の支援や人材育成をおこなう。
A「基本施策」の検討、実施を支援する学識経験者や専門家のネットワークをつくる。
B国、県に対して「基本施策」の検討、実施に必要な財政・人材の支援措置を求める。
C役場に「基本施策」の実施計画の作成、推進を担うプロジェクトを立上げる。
  ・避難生活のケア体制推進プロジェクト
  ・関連自治体と一体となった賠償、補償要求支援プロジェクト
  ・「仮の町」の早期建設プロジェクト
  ・町の低線量地域への復興活動拠点づくりプロジェクト
  ・町の除染全体計画検討プロジェクト
D実施計画の進捗管理や見直しを行う委員会を設置する

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    BMM【Belhyud Mail Media】 NV No.136
2013.6.24発行
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  【WEB】 http://www.belhyud.com/0.htm
【MAIL】 jin-inoue@belhyud.com
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  【発 行】 ベルヒュ−ド研究会
【編 集】 井 上   仁  

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